長野経済研究所「設備投資動向調査」について
長野経済研究所では年に2回(3月・9月)、長野県内企業約800社を対象に、設備投資動向調査を実施している。
今回は、今年度(2021年度)の設備投資計画に関する調査結果について報告したい。
設備投資とは何か、なぜ重要なのか
設備投資とは、企業が古くなった機械を更新したり、生産能力の拡大や技術革新などの目的で、機械を購入したり、工場などの建物を建設したりすることである。
教科書的に言うと「経済のエンジン役」である。その仕組みは、設備投資により生産が増え、企業の売上や利益が増えることで従業員の給与が増え、個人消費が拡大するというものだ。
また、新たな事業展開を行うためにも設備投資は欠かせず、経済活性化のバロメーターとも言える。
さらに、設備投資自体が、それに関係する機械メーカーや、工場を建設する建設業の売上増加にもつながる。
このように、多面的な経済効果を持つのが設備投資である。
2021年度の設備投資の見通しは対前年プラス13.3%
今回の設備投資動向調査 を見ると、2021年度の当県の設備投資計画額は、対前年プラス13.3%と二桁の増加となった。
昨年度(2020年度)は、新型コロナウイルスの感染拡大により、設備投資が相当程度抑制された。
その反動として、先送りされていた設備投資が今年度に計画されたことが、二桁増加となった理由の一つである。
また、リモートワークの拡大による情報機器需要の増加や、5G投資の本格化により、世界的に半導体需要が拡大しており、関連産業の設備投資につながったことも二つ目の要因である。
この結果、直接関係する製造業では、対前年プラス25.0%と大幅な増加となっている。
さらに、コロナ禍による「巣ごもり消費」の増加により食品関連需要が拡大し、食料品製造業の投資も大きく増加した。
一方、非製造業は対前年マイナス10.1%と厳しい結果となった。
該当する産業は、小売業、建設業、サービス業など、生活に密接に関わる分野が多い。
新型コロナウイルスへの感染懸念や、緊急事態宣言の影響により消費マインドが悪化し、小売業やサービス業の業績が低迷した。
加えて、先行きの不透明感から、設備投資に消極的な企業が増加したと考えられる。
本調査では投資金額だけでなく「投資方針」も尋ねており、観光関連産業では半数の企業が「かなり抑制的」と回答している。
観光関連産業の厳しい現状と、将来見通しの不透明さがうかがえる結果となった。
設備投資を抑制する閉そく感をどう打開するのか
このように、製造業では設備投資回復の兆しが見られる一方、非製造業は依然として厳しく、「二極化」の様相を呈している。
経済が浮揚するためには、エンジン役である設備投資の回復が不可欠であり、落ち込んでいる非製造業の投資再開が大きなポイントとなろう。
そのために必要なのは、コロナに起因する社会全体の閉そく感を打開することである。
打開の契機として、東京五輪の開催に期待したい。
依然として賛否両論はあるが、開催されれば、困難に立ち向かう選手たちの活躍が閉そく感を打ち破り、下を向いていた消費が上向くきっかけとなるのではないか。
東京五輪開催の意義については、パラリンピック競泳選手で、競泳男子全盲クラスのエースである木村敬一氏の言葉が心に響く。
新聞報道等によると、木村選手は「開催することで感染を広げることはやってはいけない」とした上で、「開催へ向けた努力は、社会を取り戻す努力につながる。(開催するための努力は)ウイルスを封じ込めていくだけの努力と、ほぼイコールだと思う」と語っている。
コロナウイルスを封じ込める努力は何より重要であり、それと同時に、平常時の事業や活動を再開・継続するための努力も同様に重要である。
新型コロナウイルス感染拡大から2回目の夏を迎えようとする今、私たちの「普通の社会」を取り戻す努力が、まさに求められているのではないだろうか。
明るい未来を信じる先に、設備投資の花が開く。
- (初出)SBCラジオ「Jのコラム」(2021年6月11日放送)